「Googleに口コミを書いていただけませんか」——お会計のときに、その一言が言えなくて、もどかしい思いをしている店主さんは多いと思います。私たちRockHillに相談に来てくださる方の中にも、「口コミを増やしたいけれど、お願いするのは違和感がある」という声がしばしばあります。その違和感は、正しい感覚です。口コミは、集めるものではありません。生まれる仕組みをつくるものです。考え方を変えると、無理なくお願いをやめられます。
「お願いするたびに、自分の店が安く感じる」という違和感
ある寿司店の店主さんから、こんな話を聞いたことがあります。「コンサルの方に『口コミを集めましょう』と言われ、3ヶ月ほどお会計のときにお願いを続けました。実際に件数は増えました。でも、なんだか自分の店が、レビュー目当てに媚びているように感じて、続けられなくなりました」。
この感覚は大切にしてほしいと、蛭田は思っています。良い店ほど、お願いに違和感を持ちます。なぜなら、お願いした瞬間に、店主・お客さんの関係が「もてなす側・もてなされる側」から「お願いする側・される側」に変わってしまうから。
口コミ件数は短期的に増えても、長期的には店の品格を削ります。常連さんとの関係性も、無意識に変質します。「いつも来てくれている、あの方に頼んだら悪いかな」という遠慮が積み重なって、店主自身も疲弊する。
なぜ「お願いする口コミ」は続かないのか
3つの構造があります。
1つ目は、お願いベースの口コミは「お願いをやめた瞬間に止まる」こと。継続的にお願いし続けないと増えない仕組みは、続きません。
2つ目は、お願いされて書く口コミは、内容が薄くなりがちであること。「美味しかったです」「また来ます」のような短文が増え、新規のお客さんが「この店ならでは」を読み取れません。読み手が判断材料にならない口コミは、件数があっても意味が薄い。
3つ目は、店主の精神的コスト。お願いするたびに、心の中で何かを削っています。それが3年続くと、接客の自然さまで失われていきます。
口コミを「集める」発想が、そもそも順序を間違えているのです。
仮想の店主A・B——口コミとの向き合い方
A店主さん(イタリア料理・開業10年)は、お会計のときに「もしよかったらGoogleの口コミを」とお願いするスタイル。月に5件ペースで増え、3年で180件。ただし、内容は「美味しかったです」「また行きます」など短文が中心。新規のお客さんがその口コミを読んでも、「この店の特徴」が伝わりにくい。
B店主さん(同じくイタリア料理・開業8年)は、お願いを一切しません。代わりに、口コミが生まれる「場面」を意識的につくっています。たとえば、コースの締めに、店主自身が席に行って「今日のメインは、◯◯さんという生産者さんが朝5時に獲った魚で——」と1分話す。お客さんは、その話を持ち帰り、SNSや口コミに書きたくなる。
3年後、Bさんの口コミは120件。Aさんより少ない。でも、1件あたりの文字数が3倍。内容も「生産者の話を聞かせてくれる」「料理に物語がある」など、新規のお客さんが「ここに行きたい」と感じる質になっています。結果、口コミ経由の新規来店は、Bさんのほうが多い。
件数ではなく、生まれ方が違うのです。
口コミが自然と生まれる5つの仕組み
口コミを「お願い」ではなく「自然発生」にするためには、現場の中に書きたくなる種を仕込みます。
- 物語:料理や食材に背景がある(誰が、どこで、なぜ作ったか)
- 驚き:予想を1ミリ超える瞬間がある(量・温度・タイミング・気遣い)
- 名前:「あの方の◯◯」と人の顔が思い出せる
- 共有したい瞬間:写真を撮りたくなる、誰かに話したくなるシーン
- 見送りの一言:お見送りに、定型ではなくその人だけへの言葉がある
この5つは、すべて現場のオペレーションの中でつくれます。広告予算も追加業務も必要ありません。やっていることの意味を言語化するだけで、お客さんは口コミを書きたくなります。
RockHillの考え方——口コミは「店の影」である
私たちRockHillは、口コミを「店の影」だと考えています。実体としての店があり、お客さんがその店を見たときに、心の中に残る「影」が口コミになる。影を太くしたければ、実体の輪郭をはっきりさせるしかない。
蛭田は、相談に来てくださる店主さんに、「最後にお見送りしたお客さんに、どんな言葉をかけましたか」と聞きます。「ありがとうございました、またお越しください」が9割。それは丁寧ですが、定型です。定型は、影として残りません。
「今日いただいた感想、嬉しかったです」「次は◯◯の季節になったら、ぜひ」——その人だけへの言葉を一つ加えるだけで、影は太くなります。口コミは、そこから自然と生まれます。
お願いをやめても、口コミは増えます。順序を変えるだけです。
もし「うちもそうかもしれない」と感じたら、一度コーチと話してみませんか。助言も提案もしません。ただ30分、現場の話を聞かせてください。
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著者: 蛭田一史(株式会社RockHill 代表取締役)|飲食店支援600店舗以上(累計)|設立2009年