飲食店の人事を「採用→定着→育成」の3層で整える設計

飲食店の人事を「採用→定着→育成」の3層で整える設計

「うち、人材で困っているんですよね」——この相談を受けて、もう少し聞くと、3種類くらいの異なる悩みが混ざっていることが多いです。応募が来ない。来ても辞める。残った人が育たない。

ぜんぶ「人材問題」と呼ばれているけれど、原因も対策も別物。これをひとまとめにして考えるから、毎回迷子になる。

私たちRockHillは、こう考えます。人事は「採用」「定着」「育成」の3層で整理すると、霧が晴れる。今日はその設計図の話です。

3つの悩みが混ざって、何も進まない現場

ある居酒屋オーナーSさんは、半年に1回「人材の打ち手」を考える時間を取っていました。でも、毎回同じ場所をぐるぐる回ってしまう。

  • 「採用広告にお金を使うべきか」
  • 「いや、辞める人を減らすほうが先か」
  • 「待てよ、残っている人が育っていないのも問題だ」
  • 「じゃあ研修制度か。でも、まず採用しないと頭数が足りない」

——3時間悩んで、結局なにから手をつけるか決まらない。「全部やったほうがいい気がする」となって、結局どれも中途半端に終わる。

これは、Sさんの能力の問題ではありません。「人材」というひとつの言葉に、性質の違う3つの問題が混ざっているから、優先順位がつけられないのです。

私たちは、こう整理します。

  • 採用(入口):店の外から人を迎え入れる活動
  • 定着(中間):入った人が辞めずに残る環境
  • 育成(成長):残った人が成長し、戦力になる道筋

この3層は、似て非なるものです。それぞれに別の打ち手があり、別の指標があり、別の責任者があるべき領域です。混ぜると、何もできなくなる。分けると、一つずつ整えられる。

なぜ3層に分けるのか

3層に分けると、3つのことが見えてきます。

1つめ、どの層で漏れているかが分かる。例えば、応募は来るのに3ヶ月で辞めるなら「定着」の問題。応募自体が来ないなら「採用」の問題。残っているけど成長しないなら「育成」の問題。漏れている層を特定できれば、打ち手は絞れる。

2つめ、順序がつけられる。3層は依存関係があります。定着が悪いまま採用を増やしても、穴の空いたバケツに水を注ぐようなもの。育成が機能しないまま定着だけ図ろうとしても、人は退屈して辞める。順序は「定着→採用→育成」または「定着→育成→採用」が、多くの店で機能します。

3つめ、指標が別物だと気づける。採用の指標は応募数や採用単価、定着の指標は3ヶ月・1年の残存率、育成の指標は戦力化までの期間や評価分布。これを混ぜると、何を測ればいいか分からなくなる。

3層は、ファネルのように上から流れます。採用で入った人が、定着の層で残り、育成の層で戦力になる。どこかが詰まっていたら、その下は機能しない

これは難しい話ではありません。むしろ、シンプルすぎて、多くの店主が見落としている構造です。

仮想のケース:オーナーSさんとオーナーTさん

同じ規模の居酒屋を比べます。

オーナーSさんは、半年に1回「人材戦略会議」を開く。毎回、採用・定着・育成のすべてを話そうとして、結局深堀りできず、「来期もまた検討」で終わる。

オーナーTさんは、3層を分けて、3年計画でこう設計した。

  • 1年目:定着の層を整える
  • 期待値の言語化(紙1枚)、入店時オリエンの整備、月1回の1on1の導入
  • 指標:1年残存率を50%→70%に
  • 2年目:育成の層を整える
  • 仕込みと接客の手順書、メンター制度、戦力化チェックリスト
  • 指標:6ヶ月での戦力化率を40%→70%に
  • 3年目:採用の層を整える
  • 既存スタッフからの紹介制度、SNSでの裏側発信、面接の2回制
  • 指標:採用単価を月8万円→4万円に、ミスマッチ離職率を30%→10%に

Tさんは、最初の1年は新規採用にほぼ手をつけませんでした。代わりに、すでにいるスタッフが辞めない仕組みづくりに集中した。結果、1年後にはスタッフ数が増えていなくても、現場の余裕が生まれ、2年目以降の打ち手が走りやすくなった。

Sさんが3年経ってもスタッフ数が変わらなかったのに対し、Tさんは3年で純増6人。広告費は半分以下になりました。

差は、「全部やろうとした」か「3層に分けて順番に整えた」かの違いだけです。

あなたの店の「3層診断」チェック

まず、3層のどこに問題があるかを見極めます。

採用の層(入口)
– [ ] この3ヶ月で、応募が月3件以上来ているか
– [ ] 採用単価(広告費÷採用人数)を把握しているか
– [ ] 「うちで働く魅力」を3つ言えるか

定着の層(中間)
– [ ] 入店1年以内の離職率を把握しているか
– [ ] 新人に「期待」を紙で渡しているか
– [ ] 月1回、1人ずつ話す時間を持っているか

育成の層(成長)
– [ ] 「半年後にできるようになっていてほしいこと」を明文化しているか
– [ ] 教える時間がシフトに組み込まれているか
– [ ] 「独り立ち」の基準を本人と共有しているか

各層で「いいえ」が2つ以上ある層が、いまの最弱点です。3層すべてに穴があるなら、まず「定着」から手をつけてください。バケツに水を貯められない限り、上から注ぐ意味はありません。

私たちRockHillの考え方

私たちRockHillは、「人材を一気に解決しましょう」とは言いません。3層を一度に整えるのは、現場の体力的に無理があるからです。

蛭田は、人事の悩みを抱えるオーナーと話すとき、まず「採用・定着・育成、どこに穴がありますか」と問いかけます。多くの場合、答えはすぐに出ません。それは、3層を分けて見たことがなかったから。分けて見ると、すぐに最弱点が見える。

人事は、ゼロから作るものではありません。すでに動いている3層のどこを、今期に整えるかを決めるだけです。3年計画と聞くと長く感じますが、毎日が即興の飲食現場では、3年は短いほどです。

3層に分けて、1つずつ。これが、人事を「霧」から「設計」に変える、最初の一歩です。


「うちの最弱点は3層のどこか」が分からないときは、まず診断から始めるのがおすすめです。

飲食店の昇進・育成診断ハブ

人材課題を全体俯瞰したいときは、飲食店の人材課題総まとめもあわせてどうぞ。話を聞いてほしいときは相談へ。


RockHillの強くなる飲食店向けツール

現場の課題を整理したいときは、次の導線も活用してください。記事を読んで終わりにせず、自店の現在地を測り、必要な一手に落とし込むための入り口です。


著者: 蛭田一史(株式会社RockHill 代表取締役)|飲食店支援600店舗以上(累計)|設立2009年

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この記事を書いた人

ロックヒル

株式会社ロックヒル

株式会社ロックヒルは、飲食企業の集客・広報・マーケティングを「内製化できる仕組み」として構築する支援会社です。SNS運用・MEO・導線設計・スタッフ育成まで、現場と経営をつなぐ伴走型サポートが強みとしてます。代表の蛭田はSHOGUN BURGER CMOなどの経験を持ち、飲食店の成長支援実績が豊富です。