店長候補が育たない理由とは?診断で見直す育成設計完全ガイド版

店長候補が育たない理由とは?診断で見直す育成設計完全ガイド版

著者: 蛭田一史(株式会社RockHill 代表取締役)|飲食店支援600店舗以上(累計)|設立2009年


はじめに

「店長候補を育てているのに、いつまでも育たない」と感じている飲食店オーナーや本部担当者は少なくありません。育成への投資を続けているのに成果が出ない。この状況には、ほとんどの場合、共通した構造的な問題があります。

問題の本質は「育て方」ではなく、「誰を育てるか」の見極めが先にできていないことです。適性が合わない人に長期間投資を続けることは、本人にとっても組織にとっても消耗になります。

本記事では、店長候補が育たない理由を3つのパターンで整理し、昇進前に診断を活用して「育成すべき軸と人」を見極める仕組みを解説します。

関連記事: 飲食店の人材課題を総まとめで解説(D-50)


「店長候補が育たない」問題の本質

育成投資がうまく機能しない組織に共通しているのは、「育成の順番が逆になっている」という点です。

多くの組織では、「この人が次の店長候補だ」と決めた後に育成を始めます。しかし、その前に「この人は店長に向いているか」「どの軸が強くてどの軸が弱いか」という見極めができていません。

見極めなしに育成を始めると、次の問題が起きます。

  • 向いていない人を育てている:本人も苦しく、時間とコストも無駄になる
  • 育成の優先順位が間違っている:強みをさらに伸ばすより弱点を補う方が先
  • 評価基準が曖昧:「育った」「育っていない」の判断が主観になる

これを解決するために必要なのが、昇進前に適性を数値で見える化する仕組みです。


育たない理由の3パターン

パターン1:向いていない人を育てている

店長に必要な5軸(リーダーシップ・マネジメント・売上数値管理・人材育成・顧客満足度向上)のうち、2軸以上が著しく低いにもかかわらず、「頑張り屋だから」「長く働いているから」という理由で育成を続けているケースです。

適性の問題は、時間をかけても解決しないことがあります。3年育てて変化がなかった場合、それは「育て方が悪い」のではなく「この役割への適性がない」可能性を検討すべきタイミングです。

パターン2:育成方法が間違っている

適性はあるが、育成の方法が機能していないケースです。「現場に置けば育つ」という方針で、体系的な育成がない組織に多く見られます。

このパターンは、どの軸が弱いかを特定し、軸に合った育成方法を設計することで改善できます。

パターン3:評価基準が曖昧で育成の成果が測れない

「育った」「育っていない」の判断が上司の主観になっており、本人が何をどう頑張ればよいかわからない状態です。育成計画は存在するが、達成の定義がない。

この状態では、育成への意欲が維持できません。本人も「何のために努力すればよいか」が不明確なまま時間が過ぎます。


「昇進前に適性を測る」ことが育成効率を上げる理由

昇進前に適性を把握することで、育成に関する3つの意思決定が明確になります。

意思決定1:この人を店長候補にするかどうか

診断スコアが全体的に低い(平均2.0点以下)場合、現時点での店長昇進は時期尚早かもしれません。別の役割や別のタイミングを検討する判断ができます。

意思決定2:どの軸を最優先で育成するか

合格ライン(3.2点)を下回る軸が「育成対象」です。複数ある場合は最も低い軸から着手します。これにより、育成リソースを分散させず集中投下できます。

意思決定3:どの軸は育成しなくてよいか

4.0点以上の軸は「強み」として活用する方向で考えます。強みを育成する必要はなく、弱点補強に集中できます。


診断で「育成すべき軸」と「すでに十分な軸」を分ける

店長昇進診断(通常店版)または繁盛店版を受診すると、5軸それぞれのスコアが表示されます。

スコアの分類方法

スコア 分類 対応方針
4.0点以上 強み 現状維持。他者への指導役として活用も
3.2〜3.9点 十分水準 現状維持。余力があれば向上施策も
2.5〜3.1点 育成対象 具体的な行動目標を設定して改善
2.4点以下 緊急育成対象 最優先で取り組む。改善なければ昇進時期を見直す

この分類表を育成候補者のスコアに当てはめると、「どこに時間を使うべきか」が一目で判断できます。


育成候補者リストの作り方

ステップ1:チーム全員が受診する

1人だけに受診させると、「評価されている」という圧力がかかります。チーム全員(副店長・ベテランアルバイトを含む)が受診する形にすると、育成のための情報収集というポジティブな文脈になります。

ステップ2:スコアで優先順位を付ける

全員のスコアを一覧化し、次の基準で優先順位を設定します。

優先度 条件
最優先(今期昇進候補) 全体平均3.2点以上、または1軸の弱点補強で届く
次期候補(6〜12ヶ月後) 全体平均2.5〜3.1点、2〜3軸に育成余地あり
長期育成対象 全体平均2.5点未満、基礎的な行動変容から必要
役割見直し検討 特定の軸が継続的に改善しない、本人の意志と合わない

ステップ3:本人と育成計画をすり合わせる

優先順位が決まったら、本人と面談を設定します。「あなたはこの段階にいる」という現状共有と「どこを伸ばすか」の合意形成を行います。

この面談が機能すると、育成は「やらされるもの」から「自分で選んだもの」に変わります。自律的な成長が始まります。


「店長になれる人」と「なれない人」の診断スコアの傾向

600店舗以上の支援経験から、診断スコアの傾向として以下のような特徴を観察しています(あくまで傾向であり、例外もあります)。

店長として機能しやすい人の傾向

  • リーダーシップ力が3.5点以上:チームを方向づける力がある
  • 顧客満足度向上力が3.0点以上:QSCへの意識が高い
  • マネジメント力が2.8点以上:オペレーションの基礎がある
  • 数値管理力が2.5点以上:数字を嫌がらない

全軸が高い必要はありません。リーダーシップと顧客満足度が高ければ、数値管理やマネジメントは育成で補える場合が多いです。

昇進後に苦労しやすい人の傾向

  • 人材育成力が2.0点未満:「自分でやれば早い」と思いがちで、チームが育たない
  • リーダーシップ力が2.0点未満:メンバーが指示を待つ状態が続く
  • 全軸が2.5点未満:基礎的な行動変容が必要な段階で昇進すると本人が消耗する

昇進適性診断シリーズでどう解決するか

昇進適性診断シリーズ(診断ハブ)には、店長昇進診断・SV昇進診断・マーケティング力診断の5種類が揃っています。

育成候補者のリスト作りには、まず店長昇進診断(通常店版)から始めることを推奨します。スコアが出たら、本記事の分類表に当てはめて優先順位を設定してみてください。

また、診断後の育成計画の設計については、店長昇進診断の結果を「育成計画」に変える方法(D-13)で詳しく解説しています。

さらに、飲食店の人材育成に関する課題を網羅的に把握したい場合は、飲食店の人材課題を総まとめで解説(D-50)も参考にしてください。


よくある質問 FAQ

Q1. 診断スコアが低い候補者は、昇進させないと決めるべきですか?

スコアが低いことは「昇進させない」という判断の根拠にはなりません。「現時点での育成優先軸がある」という情報として使ってください。スコアが低い軸を特定し、育成したうえで再診断する。その過程での変化を観察することが重要です。

Q2. 本人に診断スコアを見せてよいですか?

見せることを推奨します。自分のスコアを知ることで、「何を伸ばせばよいか」が明確になり、育成への主体性が生まれます。ただし、スコアだけを渡して説明しない形は避けてください。上司が一緒にスコアを確認し、育成計画に落とし込む面談を設定するのが理想です。

Q3. 診断は何度でも受けられますか?

完全無料・登録不要で何度でも受診できます。育成の進捗確認として、3ヶ月後・6ヶ月後の再受診を計画に組み込むことを推奨しています。

Q4. 複数の店舗から候補者を比較するのに使えますか?

診断結果を各候補者がスクリーンショットで保存し、一覧にまとめる形で比較できます。ただし、同じ人が同じ診断を受けても質問の理解によってスコアが変わることがあるため、相対比較よりも「各人の弱点軸の特定」に使うことを推奨します。

Q5. 店長を育てることと、向いている人を見つけることはどちらが先ですか?

「向いているかどうかの見極め」が先です。すべての人を同じように育てることは、限られたリソースの無駄遣いにつながることがあります。まず適性を確認し、その人に合った育成計画を設計することが順序です。

Q6. アルバイトに診断を受けさせてよいですか?

問題ありません。むしろ、アルバイトが「社員候補」か「店長候補」かを早期に把握できるという意味で有用です。ただし、アルバイトの場合は診断のフィードバックを「評価」ではなく「成長のヒント」として伝える配慮が必要です。

Q7. オーナー自身が受けることはできますか?

はい。自分の強みと弱みを客観的に把握するためにも有効です。オーナー自身が受診してから部下に勧めると、「一緒に成長しよう」というメッセージが伝わります。

Q8. 診断結果をもとにした育成計画の具体的な設計方法は?

店長昇進診断の結果を「育成計画」に変える方法(D-13)で3ステップと6ヶ月ロードマップを解説しています。診断受診後に読むことをお勧めします。


まとめ

「店長候補が育たない」問題は、「育て方の問題」ではなく「誰を・どの軸を育てるか」の見極めから始まる問題です。昇進前に診断スコアで適性を数値化し、育成すべき軸と十分な軸を分けることで、育成の優先順位が明確になります。

チーム全員が受診することで候補者リストが作れ、スコアに基づいた客観的な育成計画の設計が可能になります。「なんとなくこの人が次の店長」という判断から、「この軸を伸ばしてもらえば店長として機能する」という具体的な判断に変えていきましょう。


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内部リンク一覧(編集メモ)

  • D-01(https://www.rockhill.jp/blog/restaurant-promotion-aptitude-diagnostic/):「昇進適性診断シリーズ(診断ハブ)」のアンカーで設置済み
  • D-13(https://www.rockhill.jp/blog/diagnostic-to-training-plan/):「店長昇進診断の結果を育成計画に変える方法」
  • D-26(https://www.rockhill.jp/blog/restaurant-staff-development-start-with-diagnostic/):本文内に育成計画の参照として追記予定
  • D-50(https://www.rockhill.jp/blog/restaurant-hr-issues-total-summary/):「飲食店の人材課題を総まとめで解説」
  • 店長昇進診断(通常・繁盛):本文内にリンク設置済み

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この記事を書いた人

ロックヒル

株式会社ロックヒル

株式会社ロックヒルは、飲食企業の集客・広報・マーケティングを「内製化できる仕組み」として構築する支援会社です。SNS運用・MEO・導線設計・スタッフ育成まで、現場と経営をつなぐ伴走型サポートが強みとしてます。代表の蛭田はSHOGUN BURGER CMOなどの経験を持ち、飲食店の成長支援実績が豊富です。