多店舗展開で初期に失敗する店の共通項——2店舗目こそ仕組みの正念場

多店舗展開で初期に失敗する店の共通項——2店舗目こそ仕組みの正念場

「多店舗化したいが、何から始めれば良いか分からない」「2店舗目はなんとかなったけれど、3店舗目で本格的に仕組みを考えるべきか」——よく相談を受けるテーマです。私たちRockHillは多くの多店舗展開を伴走してきましたが、最も重要なのは「3店舗目」ではなく「2店舗目」だと考えています。2店舗目で土台を作り損ねた店は、3店舗目で大きく崩れます。今日はその理由を書きます。

「2店舗目はギリギリ回った」が一番危ない状態

多くの店主は、こう感じています。「2店舗目は、自分が両方の店を行き来して、なんとか回せている」「3店舗目を出す前に、ちゃんと仕組みを作らないといけない」。この発想自体は健全です。でも、順序が一つ間違っています。

「2店舗目はギリギリ回った」状態は、実は最も危険なサインです。なぜなら、その状態は「店主が二つの店の隙間を走り回ることで、辛うじて保たれている」状態だからです。表面的には回っているように見えますが、内部はすでに過剰負荷。ここで3店舗目を出すと、店主の身体が物理的に分裂できないので、必ずどこかが落ちます。

蛭田が現場で繰り返し見るのは、「2店舗目までは店主の根性で押し切れる」という事実です。問題はその「押し切れた」体験が、店主に誤った自信を与えることです。「自分が頑張れば回る」「3店舗目もなんとかなる」——この思い込みのまま3店舗目を出した店が、半年後に大きく崩れていく場面を、何度も見てきました。

3店舗目で本気を出すのは、もう遅い。2店舗目こそが、仕組みを試す本当の機会です。

なぜ「2店舗目」が仕組みの正念場なのか

理由は三つあります。

第一に、2店舗目は「店主が物理的に分裂できなくなる最初の地点」だからです。1店舗目は店主が現場にいれば回ります。2店舗目ができた瞬間、店主は「自分がいない店」を持つことになります。これは、店主が現場の代理として「仕組み」を置く、最初の練習機会です。

第二に、2店舗目は失敗してもまだ立て直せる規模だからです。3店舗目以降は、組織が大きくなり、人件費も増え、立て直しに時間がかかります。2店舗目で仕組みを試して、うまくいかなかった部分を修正する余裕は、まだあります。

第三に、2店舗目で作った仕組みが、そのまま3店舗目・4店舗目の土台になるからです。2店舗目を「店主の根性」で乗り切ってしまうと、3店舗目を出すときに、ゼロから仕組みを作り直す羽目になります。順序が逆になると、コストも時間も2倍以上かかります。

つまり、2店舗目は「もう一店を出すフェーズ」ではなく、「店主が現場から離れるための、最初の練習機会」なのです。この捉え方ができている店主と、できていない店主では、3年後の状態がまったく違います。

仮想店主:Qさんは「2店舗目をなんとか回した」、Rさんは「2店舗目で仕組みを作った」

具体例で見ます。

Qさん(45歳・ラーメン3店舗運営・3店舗目開業半年)
1店舗目は月商450万円、2店舗目は月商350万円。Qさんは週6日、2店舗を行き来して回していた。「3店舗目で本格的に仕組みを作ろう」と考え、3店舗目を出した。半年後、Qさんは慢性的に疲弊し、3店舗の数字はすべて停滞している。1店舗目の常連が「最近、店主の顔を見ない」と離れ始めた。

Rさん(42歳・居酒屋3店舗運営・3店舗目開業1年)
1店舗目で月商430万円に到達した時点で、「2店舗目を出す前に、自分が現場から離れる練習をする」と決めた。1年かけて、1店舗目で「自分がいない時間」を作り、判断基準を言語化した。2店舗目を出すとき、その言語化した基準をそのまま店長に渡した。2店舗目が安定した半年後、同じ基準を使って3店舗目を出した。

QさんとRさんの差は、能力でも資金でもありません。「2店舗目を出す前に、何を準備したか」だけです。Qさんは2店舗目を「もう一店」と捉え、Rさんは2店舗目を「自分が現場から離れる練習」と捉えた。

私たちRockHillが現場で見てきたのは、3店舗目で大きく崩れる店のほぼすべてが、Qさんのパターンだということです。これは個人の能力の問題ではなく、ただ「2店舗目を仕組みの正念場として捉えていなかった」というだけのこと。捉え方の差は、後から追いつくのが難しい差です。

2店舗目を「仕組みの正念場」として設計する、7つの問い

1店舗目で月商400万円を超えたあたりから、次の7つの問いを置いてみてください。私たちが伴走するときの、入口の質問です。

  1. 1店舗目で、自分が「3日連続で店に出ない」状態を、過去半年で経験したか
    経験がないなら、まずそこから始めます

  2. 1店舗目の判断基準を、A4で5枚程度に言語化できているか
    できていないなら、まだ2店舗目の準備段階です

  3. 2店舗目の店長候補は、1店舗目で「自分の判断で動く経験」を3ヶ月以上積んでいるか
    いきなり外部から雇うのは、難易度が高い選択肢です

  4. 2店舗目の月次の数字を、自分が見るタイミング・場所・形式を決めているか
    決めていないと、月末まで放置になります

  5. 2店舗目が3ヶ月で立ち上がらなかった場合の、撤退基準を事前に決めているか
    ここを曖昧にすると、損失が膨らみます

  6. 1店舗目の「店主依存度」を、6ヶ月かけて意図的に下げる計画があるか
    2店舗目を出してから下げようとしても、間に合いません

  7. 2店舗目で得た仕組みの学びを、3店舗目に再利用する設計をしているか
    2店舗目を「単発の挑戦」にしないために必要です

7つのうち4つ以上が「No」なら、2店舗目はまだ「気合いで出すフェーズ」にいます。これは責められる話ではなく、ただ準備の順序がまだ来ていない、というだけです。

私たちRockHillの考え方:2店舗目は「組織が生まれる瞬間」

私たちは、2店舗目を「もう一店」とは捉えていません。「組織が生まれる瞬間」だと考えています。1店舗目までは店主一人の判断で進められますが、2店舗目からは「店主以外が判断する場面」が必ず生まれます。

組織は、最初の一歩で形が決まります。2店舗目で「店主の根性」を中心に置いた店は、その後もずっと根性中心の組織になります。2店舗目で「言語化された基準」を中心に置いた店は、その後も基準中心の組織になります。最初の設計が、長く効きます。

蛭田が現場でよく言うのは、「2店舗目は、急ぐと一番損をするフェーズ」という言葉です。1店舗目で月商400万円を超えたあと、半年から1年かけて準備するのが、最もコストが低い順序です。急いで2店舗目を出して、根性で乗り切って、3店舗目で崩れる——これが、私たちが最も避けたいパターンです。

努力を「報われる形」にするには、努力の使い道を間違えないことが重要です。2店舗目を「現場で乗り切る努力」に使うのではなく、「仕組みを作る努力」に使う——順序の問題であって、量の問題ではありません。

まずは、2店舗目の準備状況を聞かせてください

もし「うちも2店舗目を急ぎすぎているかもしれない」と感じたら、一度コーチと話してみませんか。助言も提案もしません。ただ30分、現場の話を聞かせてください。

RockHillへの相談

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現場の課題を整理したいときは、次の導線も活用してください。記事を読んで終わりにせず、自店の現在地を測り、必要な一手に落とし込むための入り口です。


著者: 蛭田一史(株式会社RockHill 代表取締役)|飲食店支援600店舗以上(累計)|設立2009年

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この記事を書いた人

ロックヒル

株式会社ロックヒル

株式会社ロックヒルは、飲食企業の集客・広報・マーケティングを「内製化できる仕組み」として構築する支援会社です。SNS運用・MEO・導線設計・スタッフ育成まで、現場と経営をつなぐ伴走型サポートが強みとしてます。代表の蛭田はSHOGUN BURGER CMOなどの経験を持ち、飲食店の成長支援実績が豊富です。