「うちの店、Googleマップでちゃんと出てますよ」——そう言われても、商圏内で何位なのかを知っている担当者は多くありません。MEOという言葉は聞いたことがある。でも、具体的に何をどう測ればいいか、どこに頼めばいいかがわからないまま、気づけば業者に任せきりになっていた——そんな状況に心当たりはありませんか。この記事では、飲食チェーンの本部担当者が押さえておくべきMEOの基本を、「商圏内の順位」という具体的な数字を起点に解説します。
「食べログからGoogleマップへ」——飲食店集客の主戦場が変わった
グルメサイト離れが加速している実態と数字
ここ数年、飲食業界の集客構造は静かに、しかし確実に変わってきています。
かつて「グルメサイトへの掲載」は飲食店の集客において必須の投資でした。月数万円の掲載料を払い、クーポンを設定し、写真を磨き上げる——そうした努力が集客に直結していた時代が、たしかにありました。
ところが、2022年ごろから状況が変わり始めています。飲食店を探す際に「Googleマップ」を使うユーザーの割合が、主要グルメサイトと拮抗、または逆転している地域が増えてきました。特に30代以下の世代では、「近くの〇〇を探す」という行動においてGoogleマップが第一選択になっているケースが目立ちます。
これはグルメサイトが「使えない」という話ではありません。ただ、「グルメサイトだけを整備していれば集客できる時代」は終わりつつある、ということです。
Googleマップで「今夜どこ行く?」を決める人の行動パターン
Googleマップで飲食店を探すユーザーの行動パターンは、グルメサイトのそれとかなり異なります。
グルメサイトでの検索は、「エリア×業態×予算」を掛け合わせて絞り込む、比較検討型の動線です。一方、Googleマップでの検索は「今いる場所の近く」という位置情報が起点になることが多い。「渋谷 居酒屋」と入力して表示された一覧から、写真・評価・距離・営業時間を瞬時に見比べ、数秒で判断する——そういう即断型の選択行動が特徴です。
この即断型の行動パターンにおいて決定的に重要なのは「表示順位」です。Googleマップの一覧でどこに表示されるか。それが来店のきっかけになるか否かを、ほぼ決定します。
チェーンが本部で把握すべき「全店のGoogleマップ上の状態」
飲食チェーンの本部担当者にとって、この変化が意味することは一つです。「全店舗が、それぞれの商圏内でGoogleマップ上どの位置にいるか」を把握する必要がある、ということです。
個人店であれば一店舗だけを確認すればいいのですが、複数店舗を運営するチェーンの場合、店舗ごとに立地が違い、競合の密度も違い、当然ながらGoogleマップ上の「立ち位置」も異なります。それを本部が一元的に把握できている組織と、把握できていない組織では、集客施策の精度に大きな差が生まれます。
そもそも「MEO」とは何か——正確に理解するための最短解説
MEOとSEOは何が違うのか
「MEO」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。ただ、SEOとの違いを正確に説明できる方は少ないかもしれません。
SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)とは、Googleなどの検索エンジンで自社のウェブサイトを上位表示させるための施策です。「居酒屋 渋谷 おすすめ」といったキーワードで検索したときに、自社サイトが上位に来るよう最適化する、というイメージです。
一方、MEO(Map Engine Optimization:マップエンジン最適化)は、Googleマップの検索結果で上位に表示させるための施策です。Googleマップで「渋谷 居酒屋」と検索したときに表示される一覧——あの順位を改善するための取り組みがMEOです。
ウェブサイトの検索結果と、Googleマップの検索結果は、別々のアルゴリズムで決まります。SEOで高評価のウェブサイトを持っていても、Googleマップで上位表示されるとは限りません。両者は連動しているようで、実は別の競技なのです。
個人的にMEOという表現は好きではない理由
少し余談になりますが、個人的には「MEO対策」という言葉があまり好きではありません。
「対策」という語が、何か特別なテクニックや裏技的な施策を想像させるからです。実際には、Googleマップで上位表示されるために必要なことの大半は、正確な情報の管理と、継続的なコンテンツの更新です。特別なことは何もありません。
「Googleビジネスプロフィール(GBP)の最適化」と言い換えると、やるべきことが明確になります。Googleが運営するビジネス向けのプロフィールページをきちんと管理し、お客様が知りたい情報を正確に提供し続ける——それが本質です。
「Googleビジネスプロフィールの最適化」と言い換えると本質が見える
Googleビジネスプロフィール(旧称:Googleマイビジネス)は、飲食店がGoogleマップ上に情報を掲載するための、Googleが提供する無料ツールです。
ここに登録された情報——店名、住所、電話番号、営業時間、カテゴリ、写真、口コミへの返信——これらを正確に、継続的に更新することが、Googleマップでの上位表示につながります。
「商圏」という概念を掴む
商圏(しょうけん)とは——店が集客できる現実的な半径
商圏とは、「店舗が顧客を引き寄せられる地理的な範囲」のことです。飲食店の場合、業態や立地によって異なりますが、おおよそ徒歩圏内(半径500m前後)から、車・電車での来店を含めると数km程度が一般的な商圏です。
ランチ需要が中心のオフィス街の定食屋なら、商圏は徒歩5分以内(約300〜400m)が主です。週末に家族連れが来るファミリーレストランなら、車移動を含めると半径3〜5kmが商圏になるケースもあります。
飲食業における「商圏」とは、要するに「この範囲のお客さんが来てくれる可能性のある場所」です。そしてMEO診断が測るのは、その商圏の中で、自店がGoogleマップ上で何番目に表示されているか——つまり「商圏内順位」です。
半径500m〜2kmの中に競合は何店あるか(業態別の目安)
チェーンの担当者の方に、一つ質問があります。御社の各店舗の商圏内に、同業態の競合が何店舗あるか、把握していますか?
居酒屋チェーンであれば、駅近くの店舗は半径1km以内に30〜50店舗の競合が存在することも珍しくありません。カフェであれば、商業施設内の店舗なら施設内だけで10〜20店のカフェが競合になり得ます。ラーメン店であれば、激戦区と言われる都市部では半径500m以内に10店以上が競合になるエリアもあります。
(図解:商圏半径と競合マッピングのイメージ)
(図解:中心に自店を置き、半径500m・1km・2kmの同心円を描く。各エリア内に点在する競合店をアイコンで表示。「Googleマップ上位表示店」を色付きで、「下位の店」をグレーで示すことで、商圏内での立ち位置を視覚化)
診断で何がわかるのか——5軸スコアの読み方
基本情報/写真/クチコミ/更新/商圏ポジションの5軸
商圏スコア(meo診断.net)では、飲食店のGoogleビジネスプロフィールを5つの軸で評価します。
- 基本情報(重み20%):店名・住所・電話番号・営業時間・定休日の正確さと完成度
- 写真(20%):掲載枚数と更新頻度
- クチコミ(20%):評価の総数、平均スコア、返信率
- 更新(15%):投稿・メニュー・情報更新の頻度
- 商圏ポジション(25%):競合40店の中での相対的な順位
この5軸の中で、最も重みが大きいのが「商圏ポジション」(25%)です。最終的に何位に表示されるかが最も重要な指標だからです。
「うちの店、商圏40店中19位」——この数字が持つ意味
診断結果として「商圏40店中19位」という数字が出た場合、Googleマップの検索結果でユーザーが目にするのは、上位3〜5店舗です(スマートフォンの画面上では特に)。19位という順位は、ほとんどのユーザーの目には触れない位置にあることを意味します。
「19位」という数字がわかることで初めて、「なぜ19位なのか」「何を改善すれば順位が上がるか」という具体的な議論ができます。数字がない状態では、改善の議論は抽象論のまま終わってしまいます。
複数店舗を抱える担当者こそ「店舗ごとの現在地」が必要な理由
チェーン本部の担当者にとって、5軸スコアが重要なのは「店舗間の比較ができる」という点でもあります。
たとえば、A店は「写真スコア40点・クチコミスコア70点」なのに対し、B店は「写真スコア75点・クチコミスコア30点」だとします。同じ業態の店舗でも、弱点の軸がまったく異なるケースは珍しくありません。
こうした店舗ごとのスコア差が可視化されることで、「A店は写真強化を優先、B店はクチコミ返信に集中」という、店舗ごとの改善アクションを正確に割り振ることができます。
ミニケーススタディ
事例A:12店舗チェーン本部が全店一括診断→優先改善店を特定
関東圏に12店舗を展開する居酒屋チェーンのケースです。本部担当者は「なんとなく各店のGoogleマップはできている」と認識していましたが、全店を商圏スコアで診断したところ、12店舗中4店舗がそれぞれの商圏内で15位以下に沈んでいることがわかりました。
本部が優先改善対象の4店舗に対して情報整備を指示し、2ヶ月後に再診断したところ、4店舗の平均商圏順位が18位から9位に改善。Googleマップ経由の問い合わせ数が約1.4倍に増加しました。
事例B:大阪・カフェ3店舗/写真更新だけで2店舗が商圏上位に浮上
大阪市内で3店舗を運営するカフェチェーンのケースです。写真スコアが3店舗とも30点台で、最後の写真更新が1年以上前でした。商圏ポジションは3店舗とも12〜18位の間でした。
担当者が各店の料理・内観・季節メニューの写真を15枚ずつ追加し、3週間後の再診断では3店舗中2店舗の商圏ポジションが8位・7位へ浮上しました。投資コストはスタッフの撮影時間のみ。外注費はゼロです。
まとめ:外注に頼らない状態を作るために
自社で「全店の現在地」を把握することから始まる
MEOに関して「業者に任せている」というチェーンは少なくありません。問題は「自社に数字がない状態のまま業者に任せている」ことです。
自社に数字がなければ、業者のパフォーマンスを評価できません。「順位が上がりました」と言われても、商圏の中で何位から何位になったのか、競合が何店あるのか——そういう文脈を持たないまま、毎月数万円を払い続けることになります。
まず「全店の現在地」を自社で把握すること。これが最初の一歩です。
外注に頼らない状態が、集客の主導権を取り戻す
外注に頼らない状態をゴールに置くことで、集客施策の意思決定が自分たちに戻ってきます。月900円の診断ツールで全店のGoogleマップ状態を可視化し、改善の優先順位を自社で持てるようになる——それが、商圏スコアで実現しようとしていることです。
今すぐ商圏内の現在地を確認する
店名を入力するだけで、近隣40店の中で自店が何位かを3分で確認できます。まずは現在地を知ることから始めてみてください。
より深く改善を進めたい方へ——複数店舗のMEO戦略立案や月次伴走サポートを希望される場合は、繁盛店DXラボ(¥16,500/月) もご覧ください。
蛭田一史(ひるた・かずし)
株式会社RockHill 代表取締役 / 設立: 2009年5月 / 神奈川県三浦市出身
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