「集客費は毎月払っているのに、正直なところ効果がよくわからない」——飲食チェーンの本部担当者から、こうした言葉をよく耳にします。グルメサイトの掲載料、MEO業者への委託費、広告費……合計すると月に相当な金額が出ているはずなのに、それが集客にどう影響しているのか追えない状態。この記事では、その原因の多くが「Googleマップ上の商圏内順位を把握していない」ことにある、という構造を解説します。数字を持てば、集客費の使い方は変わります。
「集客費を払っているのに来客が増えない」——その原因の盲点
グルメサイト掲載料は「広告」であって「資産」ではない
飲食チェーンの集客費の内訳を聞くと、多くの場合グルメサイトへの掲載料が大きな割合を占めています。月3〜8万円のプランで掲載し、クーポンや特集ページへの露出を買う——これは「広告費」です。
広告の特性は、払い続ける限り効果が続くが、止めた瞬間にゼロになる、という点です。グルメサイトの掲載をやめれば、そのサイト経由の来店はなくなります。
一方、Googleマップ上での評価——写真・口コミ・更新頻度——は、積み上げ型の資産です。今日更新した写真は明日も明後日も存在し続け、口コミへの返信は新規ユーザーが読むたびに印象を作ります。
広告費と資産投資を混同しないこと。そしてGoogleマップへの投資は「資産」として捉えること。これが集客費を正しく使うための、最初の視点の整理です。
Googleマップの商圏内順位を誰も教えてくれない理由
「Googleマップで今うちの店は何位ですか?」という質問に、答えられる業者は多くありません。
なぜなら、Googleマップの表示順位は「検索した人の現在地」「検索したキーワード」「検索した時刻」によって動的に変わるからです。業者が「順位が上がりました」と報告する場合も、どの地点から何のキーワードで測定したのかが不明確なケースが多い。
「商圏」という概念——実際に来客が発生する半径の中で、競合何店と比較したときに自店が何位にいるか——という視点での測定は、業者任せにしていても得られないことが多いのです。
チェーン本部が「各店のGoogleマップ状態」を把握していない現実
「各店のGoogleビジネスプロフィールを最後に確認したのはいつですか?」という質問に詰まることがよくあります。
「今この瞬間、各店が商圏内で何位にいるか」を把握している本部はほとんどありません。これは責任の問題ではなく、把握するための仕組みがなかった、というシンプルな話です。
「商圏内何位」を知らないことの3つのリスク
リスク①:競合に流れていても気づかない
自店が商圏内で15位にいるとします。来客数が伸びない原因を「立地が悪い」「景気が悪い」といった外部要因に帰属しがちです。
実際には、競合のA店が写真を月10枚更新しているのに対し自店が1年以上更新していない、B店がクチコミに全件返信しているのに自店は放置している——といった具体的な要因がある場合がほとんどです。しかし数字がないと、その原因に気づくことができません。
リスク②:改善の優先順位が店ごとに異なるのに一律対策をしてしまう
複数店舗を持つチェーンの場合、「全店でクチコミ返信を強化しよう」「全店で写真を増やそう」といった一律の施策を打ちがちです。
しかし実際には、A店の弱点は「写真の少なさ」で、B店の弱点は「基本情報の不正確さ」で、C店の弱点は「口コミへの返信率の低さ」——という具合に、店舗ごとにボトルネックが異なることが多い。
店舗ごとのスコアを把握していれば、「A店には写真担当を、B店には情報整備を、C店には返信担当を」という割り振りができます。
リスク③:業者レポートを正しく評価できないまま契約を続けてしまう
MEO業者から毎月レポートが来る。「今月は表示回数が〇%増えました」「クリック数が先月比〇%改善しました」——しかし、それが商圏内の競合との比較においてどう変化したのか、という文脈がなければ、そのレポートの意味は判断できません。
自社に「商圏内順位」という軸のデータがなければ、業者レポートを評価する基準が持てません。結果として、「よくわからないけど毎月払っている」という状態が続きます。
(図解:現在地不明のまま広告を打つ構造)
(図解:「現在地不明」の状態から矢印が出て、「グルメサイト掲載費」「MEO業者費用」「広告費」の3つのコストが発生。しかし「集客効果」への矢印が点線(不明)で描かれる。対比として「現在地把握」の状態では各コストから「集客効果」への矢印が実線になっているイメージ)
業者に丸投げすることのコストと構造的な問題
MEO業者に依頼すると月2〜5万円×店舗数が相場
MEO対策を専門業者に委託する場合、1店舗あたり月2〜5万円というのが市場の相場感です。10店舗運営するチェーンであれば、月20〜50万円のコストが発生します。
問題は「高い・安い」ではなく、「何に対して払っているのかが可視化されているか」です。業者が行う作業の多くは、Googleビジネスプロフィールの情報更新、写真追加、投稿、口コミ管理です。これらは構造を理解すれば、自社のスタッフでも対応できる施策です。
「レポートは来るが、何をやっているかわからない」の正体
MEO業者への不満で最も多いのが「レポートは来るが、具体的に何をやっているかわからない」という声です。
評価軸を持つために最低限必要なのは、「自店が商圏内で何位にいて、どの軸が弱いか」というシンプルな情報です。それさえあれば、業者の報告を「課題に対して適切なアクションが取られているか」という視点で見ることができます。
自社に数字がない限り、改善は他人任せのまま
自社が「商圏内順位」「5軸スコア」という数字を持つことで初めて、業者を使うにしても自社でやるにしても、「目的地に向かって何かをしている」という状態が生まれます。
ミニケーススタディ
事例C:東京・居酒屋チェーン8店舗/業者任せ2年間→商圏15位固定を初めて認識
東京都内に8店舗を展開する居酒屋チェーンのケースです。2年間、MEO業者に1店舗あたり月3万円を支払い、合計月24万円の委託費を使っていました。
商圏スコアで全8店舗を診断したところ、全店が商圏内で11〜18位に集中していることが判明。業者が報告していた「表示回数」は、商圏外からのロングテール検索での表示が大半でした。
この結果を持って業者との契約内容を見直し、「商圏内順位の改善」を明確な目標として設定。3ヶ月後の再診断では、8店舗中5店舗が商圏10位以内に浮上しました。
事例D:神奈川・ラーメン3店舗/診断で費用対効果ゼロ店舗を発見→費用配分を見直し
神奈川県内に3店舗を運営するラーメンチェーンのケースです。3店舗すべてにグルメサイトの上位掲載プラン(各月5万円)を契約し、合計月15万円の掲載費を使っていました。
商圏スコアで診断したところ、郊外のC店だけが商圏内2位という良好な状態で、残り2店舗(A店・B店)は商圏14位・17位でした。
担当者は診断をもとに、A店・B店のGoogleマップ改善を優先。グルメサイトの費用はA店を月5万円→3万円に見直し、浮いた費用をスタッフ撮影とクチコミ体制整備に充てました。6ヶ月後、A店の商圏順位は14位から7位に改善し、Googleマップ経由の問い合わせが月間30件を超えました。
数字を持つことで、投資判断が変わる
商圏ポジションを起点に「改善優先店」を決める
商圏内順位という数字を持つことで、「この店は放置しても商圏2位なので現状維持施策のみ」「この店は商圏18位なので集中改善が必要」という判断ができます。
月900円×店舗数で全店モニタリングができる設計
商圏スコアは1店舗あたり月900円で診断・モニタリングが可能です。10店舗のチェーンであれば月9,000円。月数万円のMEO委託費の数分の一のコストで、全店の商圏内現在地を把握し続けることができます。
外注費の削減ではなく「判断できる状態」を作ることがゴール
これは業者を使うな、という話ではありません。業者を使うにしても、自社でやるにしても、「判断できる状態」を作ることがゴールです。
まとめ:まず現在地を知る、それだけでいい
難しいことは必要ありません。店名を入力するだけで、商圏内の競合40店との比較における自店の順位が3分でわかります。
現在地を知ること。それが集客費を「使っているだけ」の状態から脱け出すための、最初の一手です。
今すぐ商圏内の現在地を確認する
店名を入力するだけで、近隣40店の中で自店が何位かを3分で確認できます。まずは現在地を知ることから始めてみてください。
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蛭田一史(ひるた・かずし)
株式会社RockHill 代表取締役 / 設立: 2009年5月 / 神奈川県三浦市出身
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