「うちは隠れ家でいいんです」——20年以上、その言葉を支えにやってきた店主さんに、私たちRockHillは何度もお会いしてきました。常連さんに愛され、口コミだけで回ってきた。でも、ここ数年、その常連さんが少しずつ来なくなる。歳を取ったから、引っ越したから、亡くなったから——理由はいろいろですが、結果として客層が静かに縮んでいく。隠れていることは美徳でも、埋もれることは違います。「見つけてもらう」は、偶然ではなく設計で変えられます。
「いい店なのに、なぜ若い人が来ないのか」
ある洋食店の店主さんは、こう話されました。「30年やってきて、味は変えていない。なのに、常連さんの平均年齢が毎年上がる。気づいたら、店内が同窓会みたいになっていて、新しいお客さんが入りづらい雰囲気になっていた」。
これは多くの「いい店」に共通する痛みです。常連さんの満足度は高い。料理の質も落ちていない。それでも、新しい人が入ってこない。なぜか。
理由はシンプルで、新しい人が「この店の存在を知る経路」がないからです。20年前は、近所の口コミと電話帳と雑誌があれば足りました。今は、Googleマップ、Instagram、食べログ、ブログ——いくつもの経路に分散しています。そのどこにも自分の店が出てこなければ、存在しないのと同じになる。
「私たちは美味しい料理を出していれば、口コミで広がるはずだ」——その信念は、20年前は正しかった。今は、それだけでは届かない構造になっています。
構造の変化——「探される側」から「見つけてもらう側」へ
なぜ口コミだけでは届かなくなったのか。3つの構造変化があります。
1つ目は、お客さんの初動が「検索」になったこと。新しい店を試そうと思った瞬間、まずスマホを開く。そこに出てこない店は、存在を認知されません。
2つ目は、人間関係の希薄化。昔は「あの店良かったよ」と隣人に伝わる経路がありました。今は隣人と話す機会自体が減り、口コミの伝播力が落ちています。
3つ目は、情報の過剰供給。お客さん側は、毎日大量の店情報を浴びています。その中で覚えてもらうには、「美味しい」だけでなく「この店が自分にとってどういう意味を持つか」が分かる必要があります。
つまり、待っているだけでは届かない。でも、これは「広告にお金をかけよう」という話ではありません。設計の話です。
仮想の店主A・B——同じ実力、違う結末
A店主さん(イタリア料理・開業18年)は、発信は最低限。Googleマップは住所と電話番号だけ、HPは10年前のまま、SNSはやっていない。「料理に集中したいから」という理由。常連さん12組で月商は維持できている。でも、その常連さんが1組ずつ卒業していくたびに、売上が1割ずつ落ちる。新規流入が「ゼロ」なので、補充できない。
B店主さん(同じくイタリア料理・開業16年)は、5年前から少しずつ整え始めました。Googleマップに料理写真と店内写真、休業情報を更新。HPは「コース内容」と「シェフの考え」を1ページで見せる形に。Instagramは月8投稿、「ワインの選び方」というテーマで蓄積。「特別な日に静かに食事ができる店」という意味づけが、自然と外から見える状態になりました。
5年後、Bさんの店は新規来店が月15組ペースで入り、常連さんの卒業を補える状態になっています。Bさんは料理を変えていません。見つけてもらう経路を整えただけです。
マーケティング設計——6つの問い
派手な施策は要りません。順序よく整える、次の6つを点検してみてください。
- Googleマップに、今月の写真が1枚以上あるか
- HPに、店主自身の言葉で「どんな店か」が書かれているか(テンプレ文章になっていないか)
- 「特別な日」「ひとり時間」など、お客さんの動機別に来店シーンが想像できるか
- SNS(あるいはブログ)で、月に2回以上は店の温度が伝わる発信ができているか
- 食べログ・ぐるなびなどの他媒体に、最低限の情報整合性が取れているか
- 「うちは何屋か」を、スタッフ全員が同じ言葉で説明できるか
最後の項目が一番大事です。店主の中で「うちはこういう店だ」が言語化されていないと、どの媒体で発信しても情報がブレます。
RockHillの考え方——「埋もれる」は怠慢ではない
私たちRockHillは、「埋もれている良い店」を、これまでに何百と見てきました。共通して感じるのは、店主さんは怠けているわけでも、努力していないわけでもないということです。現場で全力を出しているからこそ、外への発信に手が回らない。それだけです。
蛭田は、相談に来てくださる店主さんに、まず「この店をひと言で言うと何ですか」と聞きます。多くの方が即答できません。それは恥ずべきことではなく、外向きに言語化する時間を取ってこなかっただけ。順序を整える伴走が、そこから始まります。
「見つけてもらう」は、運でも才能でもなく、設計です。
もし「うちもそうかもしれない」と感じたら、一度コーチと話してみませんか。助言も提案もしません。ただ30分、現場の話を聞かせてください。
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RockHillの強くなる飲食店向けツール
現場の課題を整理したいときは、次の導線も活用してください。記事を読んで終わりにせず、自店の現在地を測り、必要な一手に落とし込むための入り口です。
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著者: 蛭田一史(株式会社RockHill 代表取締役)|飲食店支援600店舗以上(累計)|設立2009年