1店舗目で頑張りすぎる店主が、2店舗目で躓く構造的な理由

1店舗目で頑張りすぎる店主が、2店舗目で躓く構造的な理由

1店舗目で頑張りすぎる店主が、2店舗目で躓く構造的な理由

「1店舗目はうまくいったのに、2店舗目で同じことができない」——多店舗化を考え始めた店主から、いちばんよく聞く言葉です。私たちRockHillはこれまで、数多くの2店舗目立ち上げを伴走してきました。そこで分かったのは、これが個人の能力や運の問題ではなく、構造の問題だということでした。むしろ「1店舗目で頑張りすぎた店主」ほど、2店舗目で躓きやすい。今日はその理由を、できる限り平易に書きます。

「1店舗目の自分」を再現できない苦しさ

2店舗目を出した直後、多くの店主はこんな違和感を覚えます。「同じメニュー、同じ内装、同じ価格帯なのに、なぜか売上が伸びない」「スタッフの動きが、1店舗目とまったく違う」「自分が現場に行くと回るが、離れると数字が落ちる」。

これは現場でほぼ共通して見られる現象です。1店舗目では店主自身が「設備の一部」のように機能していました。お客様の顔を覚え、スタッフの気分を察し、仕込みの足りない食材を即座に補う。すべてが店主の頭と身体を経由していたのです。

2店舗目ができた瞬間、その「設備」は二つの店に同時に存在できなくなります。物理的に分裂できないのに、二つの店が同じパフォーマンスを期待される。ここで多くの店主が、自分を責め始めます。「自分の熱量が足りないのかもしれない」と。

蛭田はこの場面に立ち会うたび、こう伝えます。「あなたが悪いんじゃない、設計の問題です」と。

成功パターンそのものが、次の足枷になる

なぜ「頑張った1店舗目」ほど、2店舗目で躓くのか。理由は、1店舗目で蓄積された成功パターンが、店主自身の「身体」に染み込んでしまっているからです。

たとえば、1店舗目で「忙しい時はキッチンに入って助ける」という判断を100回繰り返してきた店主は、それを言語化していません。「なんとなく、流れを見て動く」のままでも、1店舗目では機能していました。なぜなら、自分一人がやればよかったからです。

ところが2店舗目を新しいスタッフに任せた瞬間、「流れを見て動く」という指示は伝わりません。何を見るのか、どんな流れなのか、動くとは何をすることなのか——すべてが店主の頭の中にしかない。結果、2店舗目のスタッフは「指示待ち」になり、店主は「なぜ動かないんだ」と苛立つ。これは、スタッフの能力の問題ではなく、判断基準が言語化されていなかったというだけのことです。

成功した店主ほど、自分の動きを言語化する暇がなかった。これが構造的な落とし穴です。

仮想店主:Cさんは「自分の分身を探した」、Dさんは「判断を分解した」

具体例で見ます。同じ業態、同じエリアで2店舗目を出した二人の店主の話です。

Cさん(41歳・カフェ業態・2店舗目開業半年)
1店舗目は月商380万円で安定。2店舗目には「信頼できる元社員」を店長として配置した。Cさんは週に2回2店舗目に顔を出し、「君ならできる」と励まし続けた。しかし半年経っても2店舗目の月商は220万円で、1店舗目との差は埋まらない。Cさんは「店長の責任感が足りない」と感じ始めている。

Dさん(39歳・ラーメン業態・2店舗目開業1年)
Dさんは2店舗目を出す前の半年間、「自分が現場で何を判断しているか」を毎日メモに書いた。「ピーク前のスープ仕込み量の決め方」「キャンセル時の対応の優先順位」「クレームを受けたときの初動」。気づけば判断項目は80以上になった。それを4つの大分類に整理し、店長に渡した。2店舗目は8ヶ月目で月商340万円に達した。

二人の差は、店長の能力ではなく、「店主が自分の判断を分解できていたかどうか」です。Cさんは「分身」を探していて、Dさんは「判断のリスト」を渡していた。前者は人に依存し、後者は仕組みに依存しています。

蛭田が現場で見るのは、Cさんのパターンの方が圧倒的に多いということです。これは責められる話ではなく、ただ「事前に分解する時間がなかった」だけ。気づけば、誰でもDさんの方向に進むことはできます。

2店舗目を躓かせないための、6つの問い

2店舗目を出す前——あるいは出した直後でも構いません——次の6つの問いに、自分の言葉で答えてみてください。

  1. 1店舗目で、自分が「無意識に」判断していることを、10個以上書き出せるか
  2. その判断を、店長に渡すための「基準」として翻訳できているか
  3. 2店舗目の店長に、「迷ったときの相談相手」が自分以外にいるか
  4. 2店舗目の月次の数字を、自分が見るタイミングを決めているか
  5. 1店舗目と2店舗目で、「同じにする部分」と「変えていい部分」が線引きされているか
  6. 2店舗目が3ヶ月で立ち上がらなかったときの撤退基準を、事前に決めているか

6つのうち4つ以上が「No」なら、2店舗目はまだ「気合いで出すフェーズ」にいます。準備が足りないのではなく、分解する順序がまだ来ていない、ということです。

私たちRockHillの考え方:2店舗目は「店」ではなく「組織」の話

私たちは、2店舗目を「もうひとつの店を出す」とは捉えていません。「組織を持つ」というフェーズに入る、と考えています。1店舗目は店主が機能していれば成立しますが、2店舗目からは「店主以外が判断する場面」が必ず生まれます。

このときに必要なのは、店長を奮い立たせる言葉ではなく、店長が迷わなくて済む「判断の地図」です。蛭田がよく伝えるのは、「任せる前に分解する」という順序。順序が逆になると、店長に責任だけが落ちて、店主は苛立ち、現場は萎縮していきます。

設計とは、人を信じるために必要な装置です。信じるからこそ、迷わせない。私たちが2店舗目の伴走で大事にしているのは、この一点だけです。

まずは、2店舗目の準備状況を聞かせてください

もし「うちも、2店舗目で同じことが起きるかもしれない」と感じたら、一度コーチと話してみませんか。助言も提案もしません。ただ30分、現場の話を聞かせてください。

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現場の課題を整理したいときは、次の導線も活用してください。記事を読んで終わりにせず、自店の現在地を測り、必要な一手に落とし込むための入り口です。


著者: 蛭田一史(株式会社RockHill 代表取締役)|飲食店支援600店舗以上(累計)|設立2009年

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この記事を書いた人

ロックヒル

株式会社ロックヒル

株式会社ロックヒルは、飲食企業の集客・広報・マーケティングを「内製化できる仕組み」として構築する支援会社です。SNS運用・MEO・導線設計・スタッフ育成まで、現場と経営をつなぐ伴走型サポートが強みとしてます。代表の蛭田はSHOGUN BURGER CMOなどの経験を持ち、飲食店の成長支援実績が豊富です。