毎晩、最後の皿を洗い終わったあとに「今日は何のために働いたんだろう」と一瞬よぎる。料理は丁寧に出した。スタッフは笑顔で帰った。お客様は「美味しかった」と言ってくれた。それなのに、月末の数字を見ると、思っていたほどには残っていない。
もし、あなたが「ちゃんとやっているのに、なぜか報われない」と感じているなら、この記事はあなたのためです。
結論を先に言います。良い飲食店が報われないのは、あなたの努力が足りないからではありません。努力が届く順序が設計されていないからです。
「ちゃんとやっている店」が、なぜか報われない
ある街の、住宅街の角にある居酒屋。店主のAさんは、毎朝6時半に市場に行き、その日に出す魚を自分の目で選ぶ。スタッフは長く働く子が多く、お客様の顔と名前を覚えている。常連さんは「ここがあるから、この街にいる」と言ってくれる。
それなのに、平日の19時、席は半分しか埋まらない。
隣のブロックには、半年前にできた全国チェーンの居酒屋がある。料理の鮮度はAさんの店に及ばない。スタッフは3ヶ月で入れ替わる。それでも、毎晩満席で、SNSには「映える」料理の写真が流れる。
これ、見覚えありませんか。
「美味しい」と「人を大事にする」は、もうそれだけでは届かない時代に入りました。Aさんの料理の質は、おそらく一生かけても落ちない。でも、Aさんの努力が「お客様の決断」に届くまでの順序が、設計されていないのです。
なぜ、こうなってしまうのか
ここで多くの本やセミナーは「だから発信しましょう」「SNSをやりましょう」と言います。私たちは、その前にもう一歩、構造を見ます。
良い飲食店の店主ほど、現場・スタッフ・お客様を大事にしています。その分、発信・数字・仕組み化は後回しになる。これは怠慢ではなく、優先順位の正しさです。目の前のお客様より先に、SNSの投稿を優先する店主を、私は信用しません。
でも、世の中の「お店を選ぶ仕組み」は、ここ10年で大きく変わりました。
– 来店前にGoogleマップで店名を検索される
– 口コミの☆の数で「行く・行かない」が決まる
– 写真がなければ、料理は存在しないことになる
これは、店主の人格や努力とは別の、社会のインフラの話です。インフラが変わったのだから、努力の届け方も変えるしかない。けれど、現場で毎日走っている店主が、自力でこの構造変化に追いつくのは、無理があります。
あなたが悪いんじゃない。届く順序を、誰も整えてこなかったのです。
仮想のケース:店主Aさんと店主Bさん
同じ街の、同じ規模の和食店を比べてみます。
店主Aさんは、毎日料理に向き合い、夜遅くまで仕込みをし、朝は市場へ。「うちの料理を食べてもらえば分かる」が口癖。Googleビジネスプロフィールは数年前に登録したきり放置。写真は5枚、最後の更新は2年前。月商280万円、利益率は8%。
店主Bさんも、同じくらい料理にこだわります。違うのは、月に一度、店を閉めた後に2時間だけ「お店の見え方」と向き合う時間を持っていること。
– Googleの写真を季節ごとに10枚差し替える
– 口コミに、丁寧に返信する(売り込みではなく、お礼として)
– 常連さんに「今度こういうコースを試したいんですが」とLINEで聞いてみる
Bさんは、料理人としての時間を減らしていません。料理人の時間に「店の見え方を整える時間」を、月に2時間だけ足しただけです。1年経つと、Bさんの店は月商380万円、利益率は12%になりました。
差は100万円。けれど、Bさんが特別な才能を持っていたわけでも、Aさんがサボっていたわけでもありません。順序を整えるための、月2時間があったかどうかだけです。
あなたの店が「報われる順序」になっているかチェック
今日、店を閉めた後に5分だけ。以下を眺めてみてください。
- [ ] Googleマップで自分の店を検索したとき、最新の写真は3ヶ月以内のものか
- [ ] 口コミに、ここ1ヶ月で1件でも返信したか
- [ ] 「うちのお店の一番の強み」を、スタッフ全員が同じ言葉で言えるか
- [ ] 常連さん10人の顔と、好みのメニューを思い浮かべられるか
- [ ] 来月の売上目標を、数字で答えられるか
- [ ] 「店主が倒れたら、お店は1週間回るか」を考えたことがあるか
- [ ] 月に2時間、「料理以外」のことを考える時間を確保しているか
3つ以上「いいえ」があったなら、それは能力の問題ではありません。仕組みを整える時間が、今のあなたにはないということです。
私たちRockHillが、これをやっている理由
私たちRockHillは、「売れている店」をつくる会社ではありません。愛され続ける店を、増やしたい会社です。
蛭田は、これまで600店舗以上の飲食店に関わってきました。その中で、何度も同じ景色を見てきた。料理が良くて、人が良くて、お客様に愛されている店が、ある日ふっと姿を消す。逆に、料理は普通でも、見せ方が上手いだけのチェーン店が街に増えていく。
これは、世の中が悪いのでも、店主の努力が足りないのでもありません。順序を整える伴走者が、足りないのです。
だから私たちは、コンサルでもなく、レポートを納品する会社でもなく、「現場の隣に座る」ことを仕事にしています。診断して、見える化して、ちょっとずつ仕組みにする。店主の創造性が、ちゃんとお金で返ってくるように。スタッフの真面目さが、ちゃんとキャリアになるように。
それが、良い飲食店が、ちゃんと報われる世の中をつくる、私たちなりの一歩です。
もし「うちもそうかもしれない」と感じたら、一度コーチと話してみませんか。
助言も提案もしません。ただ30分、現場の話を聞かせてください。それだけで、見えてくるものがあります。
関連記事として、現場でまず何から手をつければよいか迷ったときは、飲食店の昇進・育成診断ハブもご覧ください。
RockHillの強くなる飲食店向けツール
現場の課題を整理したいときは、次の導線も活用してください。記事を読んで終わりにせず、自店の現在地を測り、必要な一手に落とし込むための入り口です。
- 昇進適性診断シリーズ:店長・SV・経営力を5軸で可視化し、育成や配置の判断材料にできます。
- 商圏スコア(meo診断.net):Googleマップ上の商圏順位と改善ポイントを確認できます。
- RockHillへの無料相談:自社の状況に合わせて、集客・育成・仕組み化の優先順位を整理できます。
著者: 蛭田一史(株式会社RockHill 代表取締役)|飲食店支援600店舗以上(累計)|設立2009年