1店舗目は、満席が当たり前。スタッフは生き生きと働き、常連さんは自分の名前を呼んでくれた。意を決して2店舗目を出したら、なぜか同じ景色は再現されない。料理は同じ、メニューも同じ、内装も似せた。それでも、お客様の反応が、ぜんぜん違う。
もし、あなたが「あの店は私だからできたのかもしれない」と感じているなら、この記事はあなたのためです。
結論を先に言います。繁盛は才能ではなく、仕組みです。再現できないなら、それは仕組みになっていなかっただけです。
「2店舗目で頓挫」という、よくある景色
ある居酒屋の店主Gさん。1店舗目を5年かけて育て、地域の人気店になりました。「Gさんに会いに行く」と言うお客様がたくさんいた。蓄えもできたので、満を持して隣町に2店舗目をオープン。
開店から3ヶ月、想定の半分しか来ません。Gさんは2店舗を行ったり来たりして、結局1店舗目の調子まで落ちました。半年後、Gさんは2店舗目を閉めることを決断しました。
これ、見覚えありませんか。
「2店舗目で頓挫」は、飲食業界で最もよくある景色のひとつです。原因は、店主の能力不足ではありません。1店舗目を支えていたのは「Gさんという人」だったのに、それを2店舗目で再現する方法を、誰も整理していなかっただけです。
人柄、感覚、目配り、気配り。これらは、たしかに1店舗目を繁盛させました。でも、これらは「Gさんの体の中」にあって、外に出ていない。だから、2店舗目には、運ばれない。
なぜ「繁盛は才能」と思い込んでしまうのか
繁盛店の店主は、自分の動きを言語化することが、得意ではない場合が多いです。これは欠点ではなく、現場に集中している証拠です。
しかし、言語化されていない動きは、他人には見えない。本人にも見えていないことすらあります。
たとえば、繁盛店の店主は、こんなことを無意識でやっています。
– お客様が席に着いた瞬間、3秒で「今日は急いでいるか、ゆっくりか」を判断している
– スタッフの動きを横目で見て、料理を出す順番を頭の中で組み直している
– 厨房の油の音だけで、揚げ物の状態を把握している
これは才能ではなく、5年〜10年かけて身体化された判断回路です。本人は「当たり前」と思っているから、説明する気にもならない。
ところが、2店舗目を任せる店長には、この回路が無い。そして店主は「なんでこれができないの」と苛立つ。店長は「自分には才能がないのかも」と落ち込む。
あなたが悪いんじゃない。身体化された判断を、仕組みに翻訳するステップを誰も教えなかっただけです。
仮想のケース:店主Hさんと店主Iさん
同じく1店舗目で成功し、2店舗目を考える店主を比較します。
店主Hさんは、2店舗目のオープン3ヶ月前に物件を決め、内装を発注し、スタッフを募集しました。マニュアルは「1店舗目のものを流用」。新店長には「俺の動きを見て、覚えてくれ」と言いました。結果、新店長はHさんの動きを真似ようとして、自分のスタイルを失い、3ヶ月で疲弊しました。
店主Iさんは、2店舗目を出す1年前から、こんなことを始めました。
第一に、自分の1日の動きをスマホで動画に撮ってもらいました。1週間分。それを見返して、「自分は何を、何のためにやっているか」を100項目に書き出しました。
第二に、その100項目を「お店として絶対に守るべきこと(20項目)」「店長の判断に任せること(50項目)」「やらなくていいこと(30項目)」に分けました。
第三に、新店長候補と一緒に、20項目について「なぜこれが大事か」を週1回、半年間話し合いました。
2店舗目オープン後、新店長は「Iさんの動き」ではなく「お店の約束」を守るようになりました。スタイルは違うけれど、お客様の満足度は1店舗目と変わらない水準に達し、Iさんは1店舗目に戻ることができました。
差は、「自分の動き」を「お店の仕組み」に翻訳する時間を、開店前にとったかどうかだけです。
多店舗化の前にやる、仕組み化チェック
2店舗目以降を考えるなら、以下を眺めてください。
- [ ] 自分が「何を、なぜやっているか」を、100項目以上書き出せるか
- [ ] そのうち「お店として絶対に守ること」を、20項目以下に絞れているか
- [ ] 看板メニューのレシピが、誰が見ても同じ味になる粒度で書かれているか
- [ ] 「店主が3日不在でも、お店は通常営業できる」と言える状態か
- [ ] スタッフが「お店の判断基準」を、自分の言葉で説明できるか
- [ ] 売上・原価・人件費の管理が、店主の頭の中ではなく、紙かデータで残っているか
- [ ] 2店舗目の店長候補を、半年以上かけて育てているか
3つ以上「いいえ」があったなら、2店舗目はまだ早いかもしれません。1店舗目を「仕組み化された繁盛店」にすることが、最良の準備です。
私たちRockHillが「仕組み化」を伴走する理由
私たちRockHillは、繁盛を「あの店主の人柄」で片付けません。繁盛には、必ず仕組みがあると考えています。ただし、店主本人が、それを言語化できていないだけです。
蛭田は、600店舗以上の現場を見てきて、繁盛している店には共通する「動き」があることに気づきました。お客様への目配り、スタッフへの言葉の選び方、厨房の段取り。これらは、才能ではなく、観察すれば見えてくるパターンです。
私たちの仕事は、店主の頭の中にある「無意識の判断」を、外に取り出して、仕組みに翻訳することです。これができると、繁盛は再現できます。2店舗目だけでなく、3店舗目、10店舗目にも。
そして、何より大事なのは——店主が倒れても、お店が回る状態は、店主自身を救うのです。
もし「うちもそろそろ仕組み化したい」と感じたら、一度コーチと話してみませんか。
助言も提案もしません。ただ30分、お店の景色を聞かせてください。仕組み化の最初の一歩が、そこから見えてくることがあります。
関連記事として、人材面の仕組み化を考えたい方は飲食店スタッフ育成の診断スタートもご覧ください。
RockHillの強くなる飲食店向けツール
現場の課題を整理したいときは、次の導線も活用してください。記事を読んで終わりにせず、自店の現在地を測り、必要な一手に落とし込むための入り口です。
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著者: 蛭田一史(株式会社RockHill 代表取締役)|飲食店支援600店舗以上(累計)|設立2009年